会長ごあいさつ

会長あいさつ

2022~2023年度

 2022~2023年度大阪II(オオサカツー)ゾンタクラブ会長の坂本千代です。組織としてのゾンタの活動を考えるとき、私のイメージするのは、自分ひとりの目や耳では捉えきれない多くの情報を集めて判断する頭と、自分ひとりの手では届かない遠い場所にまで伸ばすことのできる長くて大きい手です。

 女性と女児の地位向上・環境改善がゾンシャン(ゾンタクラブ会員)の大きな目標ですが、衣食住という人間の基本的な生存条件に関わる問題が存在し続けていることを私は時々思い知らされることがあります。コロナによる自粛真っ最中の頃、近所のスーパーに食料品を買いに行きました。駅下の地下道から店に続く階段のわきに、顔を手でおおってうずくまっている男性がいたのですが、私が前を通るとその人が立ち上がりました。運動靴で、ごく普通の身なりをしたその中年男性(50才くらい?)が「2日前から何も食べていないんです。500円でいいのでもらえませんか?」と言うのです。

 私はとっさに「すみません」と言ってそのまま通り過ぎたのですが、数歩進んだあと心苦しくなり、立ちどまって振り向きました。男性はまたしゃがみこんでいます。私は財布から1000円出してから引き返し、「どうぞ」と言って手渡しました。スーパーで買い物をしたあと、また同じ場所を通った時にはもうその男性はいませんでした。もちろん、外国に行くと物乞いの人を見かけることがありますし、見ず知らずの人にパリの路上で突然お金を恵んでほしいと言われたことも私は何度かあります。しかし、日本でこういう経験をしたのは初めてで、かなりショックを受けました。我が家の近くでもホームレスの人を見かけることはありますが、それまでお金を恵んでほしいと言われたことはなかったので、日本社会の現状は私が思っている以上に危機的なのかもしれないと今更ながら感じたものでした。

 私が1000円を手渡した男性が本当に食べ物を買えなかったのか、物乞いする以外の手段が本当になかったのかはわかりません。ただ、目の前に現実として困っている(ように見える)人がいて自分に助けを求められた場合、聞こえないふりをして素通りするのは、やはり心が痛むのです。しかし、眼前の人をなんとか援助することができたとしても、日本中、世界中の困っている人の手助けをすることはもちろんできません。誰をどのように援助するのか(できるのか)という明確な目的と、それを達成するための広い知識や経済力、組織力がどうしても必要となります。だからこそ女性と女児に関する諸問題を中心に据えて地球的な規模でそれの解決をはかる国際ゾンタの活動の意義があるのだと思います。ゾンタを通じて、ほんの少しでも、自分ひとりでは手の届かない人々の役にたてたらいいなと思う今日この頃です。(坂本千代個人ページはこちら